2025年の仮想通貨詐欺被害、170億ドルに拡大|AI悪用が急増
チェイナリシスの報告によると、2025年の仮想通貨詐欺被害額は170億ドルに達した。AIやなりすまし詐欺の手口が高度化し、被害が拡大している。
ブロックチェーン分析企業のチェイナリシスは14日、2025年の仮想通貨犯罪に関する年次報告書を発表した。
AIと「なりすまし」が主役に
報告書によると、2025年に仮想通貨詐欺や不正活動によって盗まれた資金は、推定で170億ドル(約2兆7030億円)に達した。
この数字は、2024年の当初報告額である99億ドル(約1億5740億円)から大幅に増加しており、後に120億ドル(約1兆9080億円)へと修正された数値をさらに上回る結果となった。
同社は過去の傾向に基づき、今後数ヶ月でさらに多くの不正なウォレットアドレスが特定されることで、2025年の最終的な被害総額は170億ドルを超えると予測している。
特に政府機関を装った詐欺が主要な要素となっており、米国の電子料金収受システムを騙った偽のテキストメッセージによる被害などが確認されている。
また、AIを悪用した詐欺の手法も深刻化している。AIを活用した詐欺は、従来のソーシャルエンジニアリングの手法と比較して4.5倍もの資金を被害者から詐取していることが明らかになった。
ブロックチェーン上のデータ分析によると、AIベンダーとの関連が疑われる作戦では、1件あたり平均320万ドルを稼ぎ出しており、関連のない作戦の平均71万9000ドルを大きく引き離している。
犯罪の産業化とエコシステム
仮想通貨詐欺の規模が拡大した背景には、犯罪の「産業化」がある。参入障壁が低下し、大規模な詐欺活動が可能になったことが主な要因だ。
高度なインフラが整備され、フィッシング・アズ・ア・サービス(PaaS)やAI生成のディープフェイク、専門的な資金洗浄ネットワークなどが利用可能になっている。特にAIツールの普及は決定的で、AIを活用した詐欺の日次収益は4838ドル(約77万円)に達し、非AI詐欺の518ドル(約8万2000円)を大きく上回った。
犯罪インフラを支えるオンラインマーケットプレイスの存在も無視できない。
「Huione Guarantee」のようなプラットフォームは、2021年以降、700億ドル(約11兆1300億円)以上の仮想通貨取引を処理してきたとされる。これらの市場は、ロマンス詐欺の一種である「豚の屠殺(Pig Butchering)」やその他の不正活動に必要な基盤を提供している。
国境を越えた犯罪ネットワークは、法執行能力の低い地域のガバナンスの弱点を突き、摘発を逃れるためにインフラを迅速に移動させる適応力を見せている。
さらに、専門的な資金洗浄ネットワーク(CMLN)との統合により、仮想通貨を現実世界の資産へ巧みに変換する強固なエコシステムが形成されている。
当局の摘発といたちごっこ
法執行機関も手をこまねいているわけではない。報告書ではいくつかの重要な摘発事例が紹介されている。
英国では2025年11月、警察当局が中国人国籍の人物に対する有罪判決を勝ち取り、6万1000BTC以上を押収した。これは約50億ポンド相当の価値があり、世界最大級の仮想通貨押収事例の一つとなった。
米国でも、司法省(DOJ)が強制労働を伴う詐欺組織から150億ドル(約2兆3850億円)相当のビットコインを押収し、史上最大の没収を記録した。しかし、FBIは米国民に対し、仮想通貨ATMを利用した詐欺が増加傾向にあり、2025年だけで3億3300万ドル(約530億円)の被害が出ていると警告している。
ブロックチェーン分析によると、被害者の資金は通常、米国の仮想通貨海外取引所ランキングでも上位に入るような大手プラットフォームを経由した後、複数のウォレットや集約アドレスを通じて迅速に移動される。
これはプロによるオンチェーン資金洗浄の典型的な手口だ。当局による摘発は進んでいるものの、犯罪グループは東南アジア内外で拠点を移し、運営モデルを柔軟に変化させているため、高度化する犯罪への対策は依然として困難な課題となっている。


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