決済大手PayPal(ペイパル)は23日、同社独自のステーブルコインであるペイパルUSD(PYUSD)保有者に対して年率3.7%の報酬を提供するプログラムを発表した。
このプログラムは2025年夏から開始され、米国内のペイパルおよびVenmo(ベンモ)利用者がPYUSD残高に対して報酬を受け取れるようになる。報酬は日次で計算され、毎月PYUSDで支払われる仕組みとなっている。
PYUSD残高から得られた報酬は、加盟店での支払い、個人間送金、Xoom(ズーム)を通じた手数料なしの国際送金など、多様な用途に即時利用することが可能。また、法定通貨への換金や他のおすすめ暗号資産(仮想通貨)への交換もできる。
ペイパルのアレックス・クリス社長兼CEOは「消費者と企業は現在、商取引、仮想通貨、個人間送金、企業間決済などにPYUSDを利用している。今後は、国境を越えた送金や業者への支払い決済、将来的には支払いや請求書支払いなどの追加決済ユースケースにも対応していく」と語った。
PYUSDは米ドルと1対1の価値連動を維持するステーブルコインで、米ドル預金や米国短期国債などの資産で裏付けられている。イーサリアム(ETH)とソラナ(SOL)の両ブロックチェーン上で運用され、幅広い分散型アプリケーションとの互換性を持つ。
現在PYUSDの時価総額は約8億7300万ドルと、テザー(USDT)の約1450億ドルと比較するとまだ小規模だが、この報酬プログラムによって実用的な利用拡大を目指す。
ペイパルのブロックチェーン部門責任者ホセ・フェルナンデス・ダ・ポンテ氏は「現在PYUSDは主に仮想通貨投資の取引に使われているが、これを決済手段として普及させるために報酬プログラムを導入した」と述べている。
このプログラムはニューヨーク州のユーザーは当初対象外となる予定。また、ベンモの一般ユーザーアカウントは対象だが、ティーンアカウントやビジネスプロフィールユーザーは対象外となる。ペイパルは必要に応じて報酬率を調整する権利を留保している。
このプログラムは、ステーブルコイン市場での競争激化を背景に打ち出されたもの。
最近ではRobinhood(ロビンフッド)やRevolut(レボリュート)などの大手フィンテック企業もステーブルコイン製品の開発を進めているほか、StripeがBridgeを買収、フィデリティもステーブルコインのテストを開始するなど、業界参入が相次いでいる。
ペイパルのこの取り組みは、ステーブルコインの日常的な利用を促進し、決済システムのコスト削減と速度向上を目指す長期戦略の一環。クリスCEOは「ステーブルコインを活用して決済環境のコスト構造をいかに変えられるかを考えている」と語り、今後も決済エコシステムにおけるPYUSDの活用を拡大していく方針を示している。
コインベースは5月11日、海外サポートスタッフによる内部関与で顧客情報が流出し、約2,900億円の身代金を要求されたと発表。
MoonPayとマスターカードが提携し、世界1億5000万の加盟店で使えるステーブルコイン決済対応のバーチャルカードを提供。
暗号資産取引所コインベースが、主要株価指数S&P500に初めて採用されることが決まった。業界の伝統的金融市場への統合が進む。
米Wellgisticsは、5,000万ドルの資金枠でXRPを決済と準備資産に活用。医薬品流通業界での決済効率化を目指す。