日本政府はG7サミットで、北朝鮮による仮想通貨窃盗への協調対応を提案する。DMM Bitcoinへの不正アクセス事件を受け、サイバー犯罪対策強化を目指す。
日本政府は11日、イタリアで開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、北朝鮮による暗号資産(仮想通貨)の窃盗に対する国際的な協調対応を議題として提案する方針を固めたことが明らかになった。
この動きは、国内の仮想通貨交換業者DMM Bitcoinで発生した大規模な不正アクセス事件を受けたものだ。同社は2024年5月31日、約482億円に相当するビットコイン(BTC)が不正に流出したと発表した。
この事件は、日本の仮想通貨業界における過去最大級の被害額となり、サイバーセキュリティ対策の脆弱性を改めて浮き彫りにした。
政府は、個別の事件への対応だけでなく、国際的な犯罪組織、特に国家が関与するサイバー攻撃への包括的な対策が急務と判断している。
日本がG7で提案する協力体制の柱は、サイバー攻撃に関する迅速な情報共有と、法執行機関の連携強化である。攻撃の手口や盗まれた仮想通貨の追跡情報を各国で共有し、犯罪者が資産を現金化するのを防ぐ狙いがある。
国連安全保障理事会の専門家パネルは、北朝鮮がサイバー攻撃で得た資金を核・ミサイル開発に充てていると繰り返し指摘してきた。窃盗された仮想通貨は、複雑な取引を通じて洗浄され、追跡が困難になるケースが多い。特に今回の事件で流出したビットコインのような主要な通貨は、国際的な監視体制の強化が不可欠である。
そのため、日本は仮想通貨交換業者に対する規制監督の国際基準をさらに厳格化することも求める見通しだ。特に規制が緩い海外の仮想通貨取引所の利用が、資金洗浄の温床となるケースも指摘されている。顧客資産の保護や不正取引の監視体制について、G7が主導して世界標準を構築する必要性を訴える。
仮想通貨を巡るサイバー犯罪は、単なる金融犯罪にとどまらない。国家の安全保障を脅かす重大な脅威として認識され始めている。北朝鮮だけでなく、他の国家やテロ組織が資金調達手段として悪用するリスクは常に存在する。
G7各国はこれまでも、金融活動作業部会(FATF)が定めた「トラベル・ルール」の導入などを通じて対策を進めてきた。しかし、技術の進化とともに攻撃手法も巧妙化しており、既存の枠組みだけでは十分とは言えないのが現状だ。そもそも仮想通貨は国境を越えて瞬時に移動できるため、単一国家での規制には限界がある。
今回の日本の提案は、技術的な防御策と国際的な法執行の連携を両輪で進めることの重要性を強調するものとなる。人工知能(AI)を活用した不正検知システムの導入支援や、盗難資産の凍結・回収を円滑にするための法的な枠組み作りが今後の焦点となるだろう。
G7サミットでの議論を通じて、仮想通貨の健全な発展と利用者の保護、そして国際社会の平和と安定を守るための新たな一歩が踏み出されることが期待される。
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