トロン、市場逆風下で5%急伸｜現物取引とオンチェーン活発化

トロン（TRX）の価格は9日、直近一週間で5%、過去24時間で2.5%の上昇を記録し、0.283ドルに達した。

この価格上昇の主要因は、現物市場での買い集めとネットワーク活動の急激な増加にある。

以下、市場データとオンチェーン指標を基に、今回の価格動向の背景を分析する。

現物取引の活発化が価格を押し上げ

暗号資産（仮想通貨）分析プラットフォームCoinGlassのデータによると、過去24時間でTRXの現物買いが顕著に増加している。

具体的には、1270万ドル相当のトロンが現物市場で購入されており、この買い圧力が価格上昇の主要な原動力となっている。

AMBCryptoの分析によれば、今回の上昇は先物トレーダーではなく、現物トレーダーによる買いが主導している点が特徴的である。

現物市場での持続的な買い需要が続けば、トロンの価格はさらに上値を追う可能性が高い。

ネットワーク活動の急増が強気シグナルを補強

仮想通貨ニュースサイトArtemisのデータによると、トロンのネットワーク活動は劇的な増加を見せている。

1日あたりのアクティブアドレス数は280万から460万へと64%急増し、取引量も1100万件に達した。

このユーザー数の増加と取引量の急増は、トロンの利用拡大と資産の蓄積が進んでいることを示す強気なシグナルである。

ネットワークの活況は、TRONエコシステムへの信頼感の高まりと、資産の長期保有を志向する投資家の存在を反映している可能性がある。

DeFi指標の低迷が示す市場の二面性

一方、分散型金融（DeFi）関連の指標は、今回の上昇に対する慎重な見方を示している。

DeFi分企業DeFiLlamaのデータによると、TRONの総ロックアップ価値（TVL）は48.9億ドルで安定しているものの、顕著な回復は見られていない。

さらに、分散型取引所（DEX）の取引高は6月5日の2億1345万ドルから本日80.8万ドルへと62%急落。

これは、DEXでのユーザー活動が低下し、一部のトレーダーが資産を売却した可能性を示唆する。

このDeFi分野の低迷は、市場全体の強気ムードとは対照的であり、仮想通貨投資家のセンチメントが一様ではないことを浮き彫りにしている。

今後の展望とリスク要因

トロンの価格上昇は、現物市場の買い需要とネットワーク活動の活発化に支えられているが、DeFi分野の低迷は市場の不均衡を示している。

現物トレーダーの買いが継続し、ネットワーク活動が現在の水準を維持できれば、トロンはさらなる上昇余地を持つ可能性がある。

ただし、DEX取引量の急減は、短期的な流動性低下や一部のアルトコイン投資家の慎重な姿勢を反映しており、価格の持続性に対するリスク要因となり得る。

市場参加者は、ネットワーク活動の推移とDeFi指標の回復動向を注視する必要がある。

【6月9日最新】トロン（TRX）価格のテクニカル分析

TRON（TRX）の価格動向を、週足および日足チャートのテクニカル分析を通じて検証し、今後の市場展望を提示する。

過去の価格トレンドと移動平均線の動向を基に、短期および長期の価格動向を予測する。

週足分析：長期トレンドの強さと調整局面

出典：TradingView TRX/USD 週足 (2023年～現在まで)

週足チャートにおいて、トロンは2023年以降、顕著な強気相場を展開してきた。

2023年8月に20週移動平均線が100週移動平均線を上抜けるゴールデンクロスが発生し、長期的な上昇トレンドの開始を示唆した。

このシグナルは、2024年のビットコイン強気相場と連動し、トロンの価格を同年12月に0.4ドル台の高値まで押し上げた。

この上昇は、市場全体の楽観ムードとTRONエコシステムへの関心の高まりを反映していた。

しかし、2025年に入ると、上昇幅の調整局面が鮮明化した。直近の週足では、価格が20週移動平均線付近まで下落する場面が見られた。

この下落は、過熱した市場の冷却期間とみなされ、長期トレンドの持続性を損なうものではない。

直近では、20週移動平均線をサポートとして反発し、再び高値圏を目指す動きが観察される。

この反発は、強気トレンドの再加速を示唆する可能性があり、特に0.4ドルを再び試す展開が予想される。

日足分析：レンジ相場とブレイクアウトの可能性

出典：TradingView TRX/USD 日足 (2024年～現在まで)

日足チャートでは、2025年1月以降、トロンは0.20ドル～0.30ドルのレンジ相場を形成している。

このレンジ相場は、市場参加者のポジション整理と新たな方向性の模索を反映している。

注目すべきは、4月に20日移動平均線が100日移動平均線を上抜けるゴールデンクロスが発生した点である。

このシグナルは、短期的な上昇圧力の強まりを示しており、レンジ上限である0.30ドルへの挑戦を予兆している。

レンジ相場の長期化は、ブレイクアウト時の価格変動幅を拡大させる傾向がある。

心理的節目である0.30ドルのレジスタンスを明確に突破した場合、0.35ドル～0.40ドル台への急上昇が視野に入る。

一方、短期的な調整が発生した場合、過去に強固なサポートゾーンとして機能した0.25ドルが買い支えとして機能する可能性が高い。

この水準での買い需要は、レンジ下限での安定性を裏付ける。

トロン（TRX）相場の要点

• 長期トレンドの持続性：週足での20週移動平均線サポートの反発は、2023年以降の強気トレンドが依然として有効であることを示唆。0.4ドル台への再挑戦が中期的なターゲット。
• 短期ブレイクアウトの可能性：日足でのゴールデンクロスとレンジ相場の長期化は、0.30ドル突破による急上昇の可能性を示す。成功した場合、0.35ドル～0.40ドルが次の目標。
• サポートゾーンの堅牢性：0.25ドルは過去のサポート実績から、調整局面での買い支えとして機能する可能性が高い。
• リスク要因：レンジ下限（0.20ドル）を下抜ける場合、さらなる下落リスクが浮上。市場全体のセンチメント悪化がトリガーとなり得る。

Mika Kuramoto

CryptoDnesで専属ライターとして暗号資産領域の記事を執筆中。2020年に仮想通貨投資を開始し、ビットコインやNFT、DeFiなど多様な分野での投資経験を積む。2025年1月にCryptoDnesのチームに加わる。