トンコイン、前日比20%急騰｜TelegramとxAIの提携が後押し

トンコイン（TON）の価格は29日、一時的に前日比で20.3%急騰し、月間最高値である3.67ドルを記録した。

この顕著な価格上昇の主要な要因は、Telegramとイーロンマスク氏率いるAI（人工知能）開発会社xAIの間で発表された戦略的パートナーシップにある。

TelegramとxAIの提携が火付け役

28日、TelegramのCEOであるPavel Durov氏は、xAIとの1年間の提携契約を発表した。

この契約により、xAIが開発するAIチャットボット「Grok」がTelegramの10億人を超えるユーザーベースに統合される。

TelegramはxAIから3億ドルの現金および株式を受け取り、Telegram経由で販売されるxAIのサブスクリプション収入の50％を確保する。

このニュースは暗号資産（仮想通貨）市場に即座に影響を及ぼし、トンコインの価格は発表直後から2.94ドルから3.66ドルへと約20％上昇。24時間取引量は243％増の4.87億ドルに達した。

この提携は、TelegramがAI技術を活用した「スーパーアプリ」への進化を目指す戦略の一環と位置付けられる。

xAIのGrokは、OpenAIやMetaのモデルに対する「無検閲」の代替としてマスク氏が推進するAIであり、Telegramの広範なユーザー基盤を通じてそのリーチを拡大する。

この動きは、xAIが既存のソーシャルメディアプラットフォームXを超えて、グローバルなメッセージングプラットフォームでの展開を加速させる意図を示している。

市場の反応

トンコインの価格は過去1週間で16％、1カ月で8％の上昇を記録し、市場の強い関心を反映している。

特に、発表の2時間前から価格が動き始めたことは、市場参加者の間での事前情報や期待感の高まりを示唆する。

しかし、市場の楽観ムードには不透明感も存在する。

マスク氏は5月28日、X上で「まだ契約は締結されていない」と述べ、Durov氏の発表が正式な合意に至っていない可能性を示唆した。

この発言により、トンコインの価格は一時的に圧力を受けたが、市場のポジティブなセンチメントが継続し、価格は安定を保っている。

Telegramの資金調達とTONのエコシステム

価格急騰の背景には、Telegramの財務基盤強化も寄与している。

Wall Street Journalによると、Telegramは資産運用大手ブラックロックなどが支援する15億ドルの債券発行を計画しており、これにより同社の成長戦略がさらに加速する見込みである。

また、トンコインはTelegramが2018年に立ち上げたThe Open Networkのネイティブトークンであり、Telegramのエコシステム拡大に伴い、そのユーティリティと需要が高まっている。

xAIとの提携により、TONネットワークのユーザー増加が期待され、これがアルトコインとしての価値をさらに押し上げる可能性がある。

市場への影響と今後の展望

TelegramとxAIの提携は、AIとブロックチェーン技術の融合が市場に与える影響を示す好例である。

Grokの統合により、Telegramはユーザー体験を向上させ、AI駆動型サービスのリーダーとしての地位を確立する可能性がある。

一方、TONはエコシステムの成長と市場の信頼感により、トンコインはさらなる価格上昇の余地を持つ。

ただし、イーロン氏の発言による不確実性や、市場全体のボラティリティを考慮すると、仮想通貨投資家は慎重な姿勢を維持する必要がある。

【5月29日最新】トンコイン（TON）の価格分析

トンコイン（TON）の価格動向を、週足および日足チャートに基づき分析し、今後の市場展望を提示する。

週足チャート分析

出典：TradingView TON/USD 週足 (2023年～現在まで)

週足チャートを俯瞰すると、2024年初頭のビットコインETF承認がトンコインの長期上昇トレンドの起点となった。

同承認を背景に、トンコイン価格は2.1ドルから8.7ドル超へと急騰し、約4倍の上昇を記録した。

この急伸は、市場全体の強気ムードと、Telegramのエコシステム拡大への期待が重なった結果である。

しかし、その後の調整局面では2.4ドル台まで下落し、上昇モメンタムは明確に失速した。

足元では、100週移動平均線を一時下抜け、4月下旬に20週移動平均線とのデッドクロスが発生した。

このテクニカルシグナルは、長期的な調整局面の開始を示唆。現在、20週移動平均線が上値抵抗線として機能しており、3.6ドル付近で価格を抑えている。

このレジスタンスを明確に突破できれば、4ドル台への回復が視野に入る。

一方、突破に失敗した場合、2.5ドル台への再調整が現実的なシナリオとなる。

日足チャート分析

出典：TradingView TON/USD 日足 (2024年～現在まで)

日足チャートに視点を移すと、短期的な価格動向はよりダイナミックである。

1月上旬に100日移動平均線と20日移動平均線とのデッドクロスが形成され、短期的な売り圧力が優勢となっていた。

しかし、5月下旬のTelegramとxAIの戦略的提携発表を受け、価格は3.67ドルまで急騰し、100日移動平均線を突破した。

このブレイクは、短期的な強気シグナルの点灯を示す。

現在、価格は3.6ドル付近の直近高値を試す展開となっており、この水準を明確に上抜ければ、4ドル台への上昇が期待できる。

RSI（相対力指数）は現在65付近で推移し、過熱感は見られないものの、70を超える場合は短期的な過買いが警戒される。

ただし、3.6ドル付近の20週移動平均線が日足でも抵抗線として意識されており、この水準での攻防が今後の方向性を決定するだろう。

トンコイン（TON）相場の要点

• 週足のレジスタンス突破が鍵：20週移動平均線（3.6ドル付近）の突破が、4ドル台への回復を左右する。失敗した場合、2.5ドル台への調整リスクが高まる。
• 日足の強気シグナル：100日移動平均線のブレイクにより、短期的な上昇モメンタムが回復。直近高値3.6ドルの突破が焦点。
• 市場センチメントの影響：TelegramとxAIの提携によるポジティブなニュースが価格を下支えするが、提携の不確実性や市場全体のボラティリティがリスク要因。

Mika Kuramoto

CryptoDnesで専属ライターとして暗号資産領域の記事を執筆中。2020年に仮想通貨投資を開始し、ビットコインやNFT、DeFiなど多様な分野での投資経験を積む。2025年1月にCryptoDnesのチームに加わる。