イーサリアム(ETH)の価格は17日、直近1週間で3.4%安を記録し、1580ドル台で取引されている。
大手仮想通貨取引所バイナンスのリサーチ部門の最新レポートによると、2024年3月のデンクン(Dencun)アップグレード以降のデータ可用性(Data Availability)ロードマップが、イーサリアム(ETH)の価値捕捉を阻害する主要因とされる。
デンクンアップグレードにより、イーサリアムのスケーラビリティは「15.95倍のスケールファクター」で大幅に向上した。
しかし、この進化はレイヤー1(L1)の手数料収入を犠牲にする結果を招いた。
レイヤー2(L2)のスループット向上とコスト削減が進む一方、L1への決済手数料はわずかに留まり、ETHの価値捕捉が大きく損なわれる。
ガス手数料の大幅な減少により、競合アルトコインであるソラナ(SOL)やバイナンスコイン(BNB)が手数料捕捉でイーサリアムを上回る状況が続く。
バイナンスのレポートによると、イーサリアムの価値安定のため、データ保存に関する手数料(ブロブ手数料)価格の見直しや、データ処理量(ブロブ数)を増やすことがコミュニティで議論されている。
しかし、レイヤー2はコストに敏感であり、手数料が高すぎると、Celestia、EigenLayer、NearDAといった安価な代替システムに移行する可能性がある。
これらの競合は高速で低コストのデータ処理を提供し、イーサリアムにとって大きな脅威となる。
ベースドロールアップは、レイヤー1に処理を委ねることで、効率性と価値の確保を両立する可能性がある。
例えば、Taikoのようなベースドロールアップは、過去1年間で主要なL2システムを合わせたよりも多くの手数料をイーサリアムに還元し、データ送信量を抑えた。
しかし、2025年5月のPectraアップグレードや2025年後半のFusakaアップグレードでは、ベースドロールアップの優先度が低く、価値確保の課題をすぐに解決する進展は見込みにくい。
イーサリアムの価格は、データ可用性の方針による価値確保の低下や、ソラナやBNBチェーンとの手数料競争に影響を受ける。
ベースドロールアップの活用や手数料の見直しが解決策として挙がるが、アップグレードの優先順位やL2のコスト意識が課題となる。
出典:TradingView ETH/USD 週足 (2024年~現在まで)
イーサリアム(ETH)は2024年の強気相場を経て、現在明確な調整局面に突入している。
2023年11月のゴールデンクロスを起点に、ビットコインETF承認や米大統領選といった外部要因が仮想通貨投資家の需要を刺激。
価格を2,000ドルから4,100ドルへと急騰させた。
しかし、2024年12月のピーク以降、モメンタムは失速し、足元では一時1,400ドル付近まで下落。市場は新たな方向性を模索している。
週足チャートでは、2024年を通じて100週移動平均線が主要なサポートとして機能してきた。
この水準は、2023年以降の強気トレンドを支える基盤であり、価格の下落を繰り返し食い止めてきた。
しかし、2025年3月の下落でこの移動平均線を明確に下抜け、終値ベースでサポート失効が確認された。
これは、2023年以降のブルトレンドの終焉を示唆する強いシグナルである。
出来高分析でも、100週移動平均線下抜け時に売り圧を伴うボリューム増加が観測され、弱気派の支配力が強まっている。
現在の価格は1,400ドル付近で推移するが、過去の週足サポートとしての強度は乏しく、さらなる下落リスクが残る。
次の重要なサポートゾーンは1,100ドル付近に位置し、2022年の安値圏と一致する。
一方、上値抵抗としては1,760ドル付近が意識される。
この水準は、2024年後半のレンジ相場の上限であり、週足での明確なブレイクアウトがない限り、強気反転の可能性は低い。
出典:TradingView ETH/USD 日足 (2024年~現在まで)
日足チャートでは、1月下旬に20日移動平均線が100日移動平均線を下抜けるデッドクロスが形成され、売り圧が加速した。
このテクニカルイベント後、価格は1,760ドルのサポートを失い、1,420ドルまで急落。
7日には1,420ドルで一時的な反発が見られたが、出来高の増加が伴わず、反発の持続性に疑問が残る。
1,420ドルは過去のサポートとしての歴史が浅く、心理的節目としての役割も限定的である。
上値抵抗としては、1,760ドル付近が再び重要となる。
この水準は、100日移動平均線と一致し、日足実体でのブレイクが必要なハードルとなる。
逆に、1,420ドルを終値ベースで下抜けた場合、1,100ドル付近までの下落リスクが高まる。