ビットコイン(BTC)の価格は21日、アジア市場の早朝取引で3.3%上昇し、19日ぶりに8.75万ドル台まで値を伸ばした。
同時期に、金(ゴールド)も約2%上昇し、史上最高値の3385ドルを記録。両資産の連動した上昇は、米ドル安と市場の不確実性への懸念が強まっていることを示唆する。
この急伸の直接的な引き金は、トランプ米大統領が自身のSNSプラットフォーム「Truth Social」に投稿したコメントである。
同氏は「交渉と成功の鉄則:金を持つ者がルールを決める」と述べ、富と権力の結びつきを強調。
この発言は、暗号資産(仮想通貨)市場に強いインパクトを与え、ビットコインの価格押し上げ要因となった。
しかし、複数の市場アナリストは、今回の価格上昇の根本的な要因を、米中間の地政学的緊張の激化や経済的不透明感の増大と分析する。
これらのマクロ要因が、仮想通貨投資家の安全資産への需要を高めている。
米ドル指数は4月21日のアジア市場開始時に、3年ぶりの安値に沈んだ。
金融情報サイトZeroHedgeによると、この下落はトランプ大統領がFRB議長ジェローム・パウエルの更迭を検討しているとの観測が市場に広がった結果である。
国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット局長が、トランプ政権の金融政策への介入の可能性を示唆したことで、投資家のドル売り意欲が高まった。
通常、ドル安はビットコインの下落圧力を強める傾向があるが、今回は逆の動きが見られた。
ビットコインは8万6750万ドルから8万7750ドルへと1000ドル急騰し、ドル安下での従来の相関関係を打破した。
ZeroHedgeはこの現象を「市場の体制転換」と呼び、ビットコインが新たな安全資産としての地位を模索している可能性を指摘する。
金融分析メディアThe Kobeissi Letterは、ビットコインと金の同時上昇について、「市場参加者の間で米ドル安と不確実性の増大に対する共通認識が形成されつつある」と評する。
金は過去1年間で55回目の最高値を更新し、ビットコインも8.7万ドル台でその流れに追随している。
両資産の連動は近年まれであり、市場の焦点が「ドル安とリスク回避」に集約されつつあることを示す。
一方、フランクリン・テンプルトンのデジタル資産部門の分析では、ビットコインと金の相関は過去3年間で0.3を超えることが少なく、両資産は独立した動きを見せる傾向にある。
対照的に、ビットコインとテクノロジー株の相関は最大0.7に達し、リスクオン資産としての性格が強い。
今回のドル安下での上昇は一時的な相関乖離の可能性があるが、リスク資産からの完全な分離を結論付けるには、ビットコインの今後についてさらなる観察が必要である。
出典:TradingView BTC/USD 週足 (2024年~現在まで)
TradingViewのBTC/USD週足チャートによると、2023年10月の移動平均線ゴールデンクロス以降、ビットコインは長期的な上昇トレンドを維持していた。
このシグナルは市場で強力な買い要因とされ、ビットコインETFの承認も追い風となり、2025年1月に10.9万ドルの高値を記録した。
しかし、現在の価格は20.1%下落し、8.7万ドル台で推移する調整局面にある。
週足では20週移動平均線を大きく下回り、100週移動平均線との乖離が縮小している。これは過熱感の解消とトレンド再評価の兆候である。
7.4万ドルでの反発が見られたものの、3月の高値8.8万ドルを週足実体で突破できていない。
8.8万ドルを上抜けない限り、下落トレンドの継続が優勢と見るべきである。さらなる下落が続く場合、6万ドル台への急落が現実的なシナリオとなる。
出典:TradingView BTC/USD 日足 (2024年~現在まで)
日足では、2025年2月に20日および100日移動平均線のデッドクロスが発生し、短期的な弱気圧力を示す明確なシグナルが点灯した。
3月中旬以降、ビットコインは7.4万ドル~8.8万ドルのレンジ内で推移している。
現在の8.7万ドル台はレンジ上部に位置し、上昇転換の可能性を探る局面にある。
直近高値8.87万ドルのブレイクが上昇転換の鍵であり、これを達成すれば9万ドル台への回復が視野に入る。
一方、7.4万ドルを日足実体で下抜けると、6万ドル台への下落リスクが高まる。
取引量の低迷も注目点である。レンジ相場での出来高不足は、明確なトレンド形成の障害となっている。
ブレイクアウトの信頼性を高めるには、価格上昇に伴う出来高の増加が不可欠である。