ビットコイン(BTC)の価格は1日、一時9万7300ドルまで上昇し、10万ドル台回復に迫る勢いを見せた。
この価格動向の主因は、ウォール街の大手金融機関による暗号資産(仮想通貨)取引参入の動きと、企業によるビットコイン保有戦略の積極化にある。
金融大手モルガン・スタンレーが、傘下のオンライン証券E*Trade(イートレード)プラットフォームを通じて仮想通貨取引サービスを開始する計画を進めていると、ブルームバーグが報じた。
同社はビットコインやイーサリアム(ETH)などの取引をサポートするため、既存の仮想通貨企業との提携を模索しており、2026年中のサービス開始を目指している。
この動きは、E*Tradeの個人投資家が従来の証券口座を通じて直接仮想通貨を売買できる環境を整えるもので、市場の流動性向上と投資家層の拡大が期待される。
モルガン・スタンレーは既に富裕層向けにブラックロックのiShares Bitcoin Trust(IBIT)やフィデリティのWise Origin Bitcoin Fund(FBTC)などの仮想通貨連動ETFを提供している。
今回の計画はより広範な顧客基盤を対象とする点で注目されている。
同様に、米大手証券会社チャールズ・シュワブのCEO、リック・ウースター氏は、5月1日の決算発表でスポット仮想通貨取引の開始計画を明らかにした。
同氏は、仮想通貨市場の「大きなリスク」と価格の極端な変動性を認めつつも、規制環境が整備され次第、12カ月以内にサービスを開始する可能性を示唆。
両社の動きは、機関投資家や個人投資家の仮想通貨市場へのアクセス拡大を促し、ビットコイン価格の押し上げ要因となった。
一方、企業によるビットコイン保有の積極化も価格上昇を後押ししている。
ストラテジー社は4月28日時点で55万3555BTC(総額379億ドル、平均取得価格6万8459ドル)を保有していると、2025年第1四半期報告で明らかにした。
同社は2月から3月の市場下落局面でも13.7%のビットコイン収益率を達成し、2025年の収益率目標を15%から25%に、ドル建て利益目標を100億ドルから150億ドルにそれぞれ引き上げた。
さらに、新たに210億ドルのATMエクイティ・オファリングを発表し、ビットコイン保有の拡大を計画している。
このような企業の大規模なビットコイン蓄積は、供給量の減少を通じて価格上昇圧力を強める。
ビットコインは1日夜、9.7万ドルを突破したが、執筆時点では9.6万ドル台に落ち着いている。
ウォール街の参入と企業による保有拡大は、市場の信頼感を高め、短期的な価格上昇を支えた。
しかし、チャールズ・シュワブのウースター氏が指摘するように、仮想通貨の価格変動性は依然として投資家にとって大きな課題である。
規制の進展やマクロ経済環境の変化が、ビットコインの今後の価格動向に影響を与える可能性が高い。
出典:TradingView BTC/USD 週足 (2024年~現在まで)
週足チャートでは、2023年10月の移動平均線ゴールデンクロス以降、ビットコインは長期的な上昇トレンドを維持してきた。
このシグナルは市場の強気心理を裏付け、2024年のビットコインETF承認を追い風に、2025年1月には10.9万ドルの高値を記録。
しかし、4月にかけての大幅な下落により、20週移動平均線を大きく下回り、100週移動平均線との乖離が縮小していた。
この下落局面は、強気トレンドの一時的な調整と解釈される。
直近の上昇により、ビットコインは20週移動平均線を回復した。
この回復は、テクニカル的に一時的な下落トレンドの終了を示唆し、長期的な強気トレンドの再開を支持する重要なシグナルである。
20週移動平均線の上方突破は、買い圧力の再燃と市場参加者の信頼感回復を反映している。
ただし、10万ドル付近でのレジスタンスゾーンは過去の高値圏と重なり、心理的な節目として強い抵抗が予想される。
出典:TradingView BTC/USD 日足 (2025年1月~現在まで)
日足チャートでは、2025年2月下旬に20日および100日移動平均線のデッドクロスが発生し、短期的な弱気圧力が明確に示されていた。
3月中旬以降、ビットコインは7.4万ドルから8.8万ドルのレンジ内で推移し、方向感を欠いていた。
このレンジ相場は、市場の不確実性と買い手・売り手の均衡を反映していた。
4月22日の6.7%の上昇により、ビットコインはレンジを明確に上抜け、同時に100日移動平均線を突破した。
このブレイクアウトは、短期的な下降トレンド終了の可能性を示唆する。その後、価格は順調に値を伸ばし、5月1日には9.7万ドルを突破。
相対力指数(RSI)は現在65付近に位置し、過熱感は見られないものの、70を超える過買いゾーンへの接近が警戒される。
次の節目である10万ドルに向けて上昇が継続する可能性が高いが、過去の高値圏での反落リスクは依然として存在する。